お兄ちゃんとの日々

12月23日は街全体がどこかそわそわしていて、光に照らされた人の顔がうっすらと高揚していて好きだ。思わず寄り道してしまう。

 

 

一緒に暮らしているお兄ちゃんに夕食を作るため、スーパーでチキンのための鳥もも肉とサラダの野菜、そして2人分のエビスビールを買って帰った。

といっても今日で多分最後だ。お兄ちゃんは私の大学入学と同時に東京転勤が決まって一緒に部屋を借りて住み、そして私が卒業するタイミングで偶然転職が決まり家を出る。

 

私たちは6つ年が離れているからか、仲がいい。お互いにちょうどいい距離感で干渉しすぎず、暮らす上で決めたルールを大切に守り、時々「今日家にいる?」とラインして二人で飲みに出かけた。

東京で一緒に暮らしていなければ、成人した後兄弟でお酒を飲むなんてことなかっただろうと思うと、人生におけるタイミングってつくづく不思議だと思う。

 

 

引っ越し業者から送られてきたダンボールが山積みになったままの部屋で、私が料理したクリスマスディナーなるものを並べ、缶のプルタブを開ける。お兄ちゃんは12月25日に新しい家に越す予定になっている。

「4年間、あっという間だったね。」

「まあな。人生は刹那の連続っていうからな。」

 

今日がこの家で二人で食べる最後の夕食だ、と思ったけどなんとなく言わなかった。

言ってしまうと空白の感覚に襲われる気もしたし、反対になんだか感傷的になりすぎる気もした。

 

 

一通り食べ終わった後、片付けをしているお兄ちゃんの部屋から出てきた卒アルを眺めて、若い、とかこの子は今結婚して…とかあーだこーだ言い合っていた。節目にこうして思い出を振り返っているの、卒アルの正しい使い方なのでは。

 

クリスマスイブ前日の暖かい夜の中、積まれたダンボールを机にしながら兄弟でこうして過ごしていたことを、いつか懐かしく幸せな記憶として思い出すんだろうな。

その瞬間がものすごく尊いものに思えた。