宛名のない下書き

悲しい出来事も嬉しい出来事も、 電車から見る外の景色のように流れていく


自分の腕は白くて細くて世界一綺麗だなぁと心を無にして思うけどなくなりたいんだよ本当は身体を無くしてしまいたい
薄青い常夜灯に向かって伸ばした自分の腕
真逆の行為で自己が失われる
自分の身体があって若い肉体があって意思があって人間という形を作っている
形を認識した他者が入ってくる
そのことによって自分の輪郭をありありと実感する
とことんすべてを許し合い一緒になれた場合は逆のことが起こりうるのかもしれない
境界線を溶かして一体になれたことがないこの世と1つになれたことがない


ベットサイドに置いたコップ一杯の水が身体の中央をつつつと流れ落ちる
電車の音が遠くで聞こえる深夜1時
つま先からさらさらになる想像をする
昔海辺にいた私と今の私は本当に同じなのか
泣いている水と海の水はほんとうにおなじなのか

上手く言葉にすることはできない宇宙の大きさを説明できないようにこの涙を説明することはできない
ただ私は人間の醜さを思って泣く訳もなく
人間のいや私がどうしても自然に還れないことを思って泣く
身体と存在を持っている限りこの悲しみは果てることが無い
破壊と生成との工事現場生きていることと死との一体
月のみちかけと水の流れと夜の長さを思って安心して目を閉じた