長崎

港町に行きたいという理由で、ふらっと長崎にひとりで行ってしまった。

長崎はいいところ。海がある町は空と町の空気が開けていて、また自然と人の営みが調和していて美しい。

 

歩くと至る所に教会があって、坂が多い町だから少し登ると海と造船所のクレーンが見える。

大きな白い船と赤い三菱重工のクレーン。海の濃く深い青と空の穏やかな水色。

町の色と空気が一度に見渡せて、それだけでもう胸がいっぱいになる。コントラストの処理に追いつかない。

 

時折 町中に船の汽笛がボォーッと音と立てて響き渡るこの町が大好きになった。

 

 

面白かったのが、2泊3日のこの旅は1日目に道端で声かけられた全く知らないおじちゃんの車に乗って案内してもらってたことです

 

私が道で写真を撮っていたら、突然車から顔だしたおじちゃんに「そんなとかぁで何撮ってんだァ、あんたどこから来たの」と話しかけられた。

えっと東京からで、さっき午前の便で到着しましたとか言ったら「そっから皆が行くような観光地言ったってつまらんでしょ〜もっとええとこ連れてったるから後ろ乗ってき」

と言われ、いや怖すぎるでしょ…と思いながらも断りきれず、まあ最悪走ってる車から飛び降りても骨折ぐらいで済むか、と思って乗る。


でも話していくうちにおじちゃんは元観光タクシーの運転手で、定年後はこうして何百人も自分の車に乗せて案内してる人だということが分かる。

私みたいな大学生から教授、絵描き、足が悪い人など色んな人を乗せてあげて、代わりにガソリン代千円と後から手紙と写真を送ってもらうことを条件に案内してあげてるらしい。

 

実際おじちゃんのおかげで地元の人が知ってるような安くて美味しいお店とか、行きたかったけど車がないからと諦めていた外海町に行くことが出来てとても運が良かった。

山の上から見渡した水平線は今まで見てきた日本海の海よりも断然広く、向こう岸に何も見えず、太陽を波が反射して伸びる道も遥か彼方から続いていて、本当に天国から道が続いているように錯覚した。

 

外海の教会では「この娘はせっかく東京から来たからオルガン弾いたって!」と言ってくれたり、お店でも資料館でも「説明したって!」といちいち取り合ってくれた。そのおかげで初めは恥ずかしかったけど当初の予定の100倍ぐらい楽しめたと思う。

ほぼ無計画で長崎に来たから、おじちゃんがいなかったら本当に観光地をさらーっとなぞって終わるところだったよ、ありがとう、おじちゃん。

 

車に乗りながらおじちゃんは、親父に捨てられた過去の話とか狩猟の資格を持っている話とかをずっとしてくれて飽きることがなかった。

今日初めてあった人とこうして時間を共有して、1人の人生を聞いている、これが旅のご縁ってやつなんですかね。1人で旅行するの初めてだから分からないけど。

 

後部座席を海に沈んでいく夕日が橙色に染める中、なんだか不思議な感じ、親戚の子供に戻ったみたい。と思いながらうとうとしていた。

 

 

まだまだ書くことがたくさんあるけれど一旦休憩