多摩川
面接用の綺麗な言葉で塗り固めた自分を3、4ヶ月演じ続けて、自分が思っている以上になんだかとても消耗してしまっていた。
なにもない広い場所に行きたくて、日が落ちる前、ほとんど無意識に多摩川まで自転車を走らせた。
途中のコンビニでお酒を買って、土手の上のベンチの横に自転車を止める。
そこからは全てが見渡せた。グラデーションの広くて淡い空、遠くの方に霞んで見える高層ビル、目の前を流れる大きな水。
ランニングする男の人、犬の散歩をする夫婦、遠くでサッカーをする高校生、川の近くのベンチでくっつきあう男女。
缶のプルタブを開けて、アルコールを流し込む。
意味は上手く説明出来ないけれど、人間のすべてだ、と思った。人の小ささと世界の大きさ。
人の生活全てが愛しい、
高速道路を走るトラック、高架線の上を通過する電車。次第にそれらに明かりが灯り、暗闇に浮かび上がる。
人が無性に恋しくなって椅子から立ち上がる。
また頑張ろう、というよりも、これでいいんだ。という気持ちの方が強かった。
私の孤独はわたしだけ分かればいい。上手く言葉に出来ない今日のこの景色は、自分の内だけにたぶん、留めておく。